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カナダ・オーストラリアとエリザベス女王

2022年9月8日、イギリスのエリザベス女王がスコットランドのバルモラル城で亡くなられました。
25歳の若さで即位し、70年もの間イギリスの国王として君臨し多くの人々に愛されてきたエリザベス女王。



このニュースはカナダやオーストラリアに住む人々にもある影響を与えることから、関心を持った方も多いかと思います。

その影響とは、留学生も普段から使用することになる硬貨・紙幣のデザイン変更。カナダドルは全ての硬貨と20ドル札に、オーストラリアドルは5ドル札にそれぞれエリザベス女王の肖像画が採用されています。

さて、そこでひとつ疑問なのは、なぜ外国であるイギリスの王様のお顔を自国の貨幣にプリントしているのか?



その秘密は、カナダやオーストラリアの成り立ちと深い関わりがありました。

イギリスが世界を席巻した時代

かつて、帝国主義の名のもとに、イギリスをはじめヨーロッパの列強諸国がアジアやアフリカといった国々を次々と植民地にし領土を増やしていった時代がありました。



この流れのなかで、カナダとオーストラリアはイギリスの植民地下に入り、イギリスの統治をうけることになります。最終的にイギリスは50余りの国・地域を支配下に収めました。

コモンウェルスの誕生

その後、カナダ、オーストラリア、ニュージーランド、南アフリカの4国は第一次世界大戦において、人的・物的援助で大きな貢献をしたことが認められ、他の従属諸国よりも高い地位を与えられます。

植民地でありながら、本国イギリスと対等の地位を持つ自治国家として認められた瞬間です。

そこからいくつかの国際会議を経て、イギリスをトップに据えたコミュニティである「コモンウェルス(Commonwealth of Nations)」が成立しました。

コモンウェルスに属する国は元々はイギリス国王を国家元首にし、本国に忠誠を誓う連合体でした。
しかし、第二次世界大戦後にイギリスにとって最大の植民地だったインドが独立したことをきっかけにそのハードルはぐんと下がり、今ではイギリス国王を国家元首としない場合でも所属が認められています。

ちなみに、カナダやオーストラリアは今でも国家元首をイギリス国王としています。
貨幣にエリザベス女王の肖像画がプリントされるのには、こうした背景があったわけです。


どうなる?カナダ、オーストラリアの紙幣デザイン

エリザベス女王はカナダでも非常に人気があり、20ドル札に肖像画が採用されても文句が出ることはありませんでした。
ところが、王位を継承したチャールズ国王の人気はカナダ国内ではあまり高くないようで、チャールズ国王の肖像画を紙幣に採用することに反対する意見も少なくないとのこと。

また、オーストラリアでも、エリザベス女王を5ドル札のデザインに採用したのはその人格を考慮したもので国王という地位によるものではないとしており、今後自動的にチャールズ国王の肖像画を採用することにはならないと明言しています。



しばらくはエリザベス女王のお顔で据え置きのようですが、今後のデザイン変更の行方に注目です。

カナダのカナダのお金〜紙幣・硬貨〜

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