“Here you are.” がなぜ「はい、どうぞ」という意味になるのか
Here you are.
僕の世代は中1で習う表現です。今は小学校ですでに知っている子も多いでしょう。
自分が中学1年のときの英語の先生は、プリントを配るときに必ず
"Here you are."と言ってました。
この "Here you are." という表現、よく考えると意味が全然わかりません。
それぞれの単語の意味はわかるけど、なんでこの3つが並んだら「はい、どうぞ」になるのでしょう。
この謎の3語を2つの視点で解剖してみようと思います。
①文法の視点
英語には語順のルールがあります。5文型というやつです。
5種類のパターンのうち、どれにも共通しているルールのひとつが「文頭に必ず主語(S)を置く」というものです。そして、
この主語は必ず名詞でなくてはいけません。
ところが、今回文頭に置いてあるHereは「ここに、ここで、ここへ」という意味の副詞。名詞を主語にしなければいけないのに、副詞を置いてしまっている点で文法ルールを無視しています。
この文の主語はyouです。つまり、本来は
"You are here."
になるところが、どういうわけかhereが文頭に出てきちゃっているんですね。
これは「倒置」の一種です。
倒置とは、英文の絶対ルールである「主語+動詞」の語順が「動詞+主語」と反対になってしまう文型ルールの例外です。
倒置にはいくつかパターンがありますが、今回は下記の第1文型の倒置ルールが適用されています。
<第1文型の倒置ルール>
主語+動詞+副詞 → 副詞+動詞+主語
※主語が代名詞のときは、副詞+主語+動詞
たとえば警察が犯人探しをしていて、アリバイのない男に事情聴取をしています。
"It's not me," said the old man.(私じゃない、とその老人は言った。)
小説や物語を読んでいるとよく出てくる語順です。
「老人が言った」のだから、 The old man said, "It's not me." という語順になるのですが、セリフを文頭に置くことで主語(the old man)と動詞(said)の位置が逆転してしまっています。
もし主語がheという代名詞だった場合は、"It's not me," he said.となり、倒置は起きません。
"Here you are."も同じで、Hereが文頭に出てきてしまっているので普通は倒置が起きるのですが、主語がyouという代名詞のためそのままyou areと続けているというわけです。
②意味の視点
さあ、倒置が起きているということがわかったところで意味について考えてみましょう。
You are here. は、「あなたはここにいます」。単に、その事実を伝える表現です。そんなこと言われなくてもわかるよっていう感じです。
では、Hereを文頭に出すことによってどんな意味の変化が生じるのでしょうか。
here(ここに、ここへ、ここで)という副詞は「場所・存在」を示すものです。
それをわざわざ置いてはいけない文頭に置くことで、「場所・存在」を強調していると捉えてください。
「どこにいたかと思ったら、ここかー!探したよ、まったくもうどこに行ってたんだよ」
くらいな感じですかね。
渡したいものがあって、受取人を探しているという状況を想像してもらえるとわかりやすいかもしれません。
「あーいたいた、はい、どうぞ」
これで、 Here you are. をものを差し出すときに使う表現だという理屈がなんとなくわかるんじゃないかなとお思います。
以上、日常会話のなんで?を考えるお時間でした。
Naoki