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「ナイフとフォーク」は “a knife and fork” か “a knife and a fork”か?

現地で英語を話すことに慣れてくると、良い意味で「細かいことなんて気にしてられない」というマインドになります。

ここでいう「細かいこと」というのは、「この文法はあっているのか?」「この単語の使い方はあっているのか?」という類のことを指します。

会話はスムーズさが大切なので、細かいことを気にしていちいち考えているようでは円滑なコミュニケーションはとれません。

会話のそのような性質上、こうしたマインドになることは至極当然のことと言えます。

じゃあ、文法や単語の正確性がどうでもよいかというと、それはまた話が違うと僕は思います。
正しいとされる英語を話す方が相手に与える印象が良いのは明らかです。
コミュニケーションが自分1人で完結するものでない以上、相手に与える印象は大切ですよね。

さて、そこで問題です。

フレンチなどの洋食レストランでは必ず使用することになる「ナイフとフォーク」。
英語での正しい言い方は、次の①、②のうちどちらでしょう。

① a knife and fork
② a knife and a fork

どっちも一緒じゃろがい!
と思ったそこのあなた。まあ、一緒っちゃ一緒なんですが、こういう身近な話題から文法的なことが学べるものなのです。

これを読めば、"a" と"and"についての考え方が今より少しだけ明確になりますよ。
("a"は冠詞、"and"は接続詞といいます)


冠詞aの「位置」と「数」

まず①と②の違いを認識することから始めましょう。

違いはずばり、冠詞aの「位置」と「数」です。

①はknifeの前にaがひとつあるだけなのに対し、②はknifeの前にひとつとforkの前にもひとつの合計2個ありますね。

どうしてこのような違いが生まれるのか?この違いによって意味がどのように変わるのか?

それを紐解く鍵が、接続詞andなのです。

等位接続詞andの2つのポイント

このandという接続詞は正確には「等位接続詞」という名前がついています。
等位接続詞について、知っておきたいことが2つあります。

ひとつは、等位接続詞は「同じ構造のもの同士を並べる」という機能があること。
名詞 and 名詞、文 and 文、目的語 and 目的語 などというように、andの前後は必ず同類のものを置く決まりがあります。

もうひとつは、等位接続詞が何と何を並べているかを発見するためには、等位接続詞の直後を見ることです。

The house is six years old and has a large kitchen.

このandが何を並べているかは、andの直後を見て判断するんですね。
すると、has a large kitchen となっていて動詞hasで始まっているのがわかります。
ということは、動詞と動詞を並べているのだと考えます。
よって、is six years がその相棒と決まります。
つまりこの文は、The houseというひとつの主語から、is と has という2つの動詞に分岐していると考えることになり、次のような意味になります。

その家は築6年で、大きなキッチンがある


ナイフとフォークをどう捉えるか?

以上を踏まえて、①と②をもう一度見てみましょう。

① a knife and fork
② a knife and a fork

それぞれのandが何を並べているかがちょっと変わってきますね。

①だと、andの直後には fork がありますから、相棒は knife です。
②はどうかといえば、andの直後にあるのは a fork です。ということは、相棒は a knife ということになりますね。
andが並べているものがビミョ〜に違いますね。"a"のあるなしというたった一語の違いです。

ここで、最初の問題提起に戻ります。
すなわち、冠詞aの「位置」と「数」が違うことにより、意味がどう変わるのか?です。

冠詞aというのは、数えることのできる名詞が「ひとつ」のときに使うというのはご存知ですよね。
それに基づいて考えると、②の方はしっくりきます。
knife、forkという数えることのできる名詞にそれぞれ "a" をつけてひとつずつあることを表しているわけです。

①はなにか変ですね。なにが変かって、数えることのできるforkに "a" がついていないんですよ。

This is pen. が間違いなのはわかりますよね?
penは数えることのできる名詞だから This is a pen. が正しいわけです。

じゃあ、a knife and fork は間違いなのかというと、そうではありません。
これ実は、knife and fork でひとつの名詞と捉えて表現しているんです。
つまり、「ナイフとフォークのセットがひとつ」というのが、この②の意味です。

じゃあ最後の質問です。

洋食レストランのテーブルにある「ナイフとフォーク」は

① セットがひとつある
② バラバラでそれぞれ1本ずつある

のどちらで捉えるのがしっくりきますか?

①ですよね?②がしっくりくるという人は洋食向きじゃないので、和食かハンバーガーで我慢してください。

論理的な勉強でコミュニケーションを円滑に

こういう細かい知識があるかないかで、英語の理解のスピードも変わってきます。
「そういうもの」として丸暗記に走るのももちろん手ですが、仕組みを理解したうえで論理的に覚えておくことでそれ以外の表現にも応用を利かせる方がきっとお得だと思います。

もちろん、そんなことしなくたって必要最低限のことが話せればいいっていう方もいると思いますが、留学中はおそらく人生で最も「英語」という言語に興味がある期間です。

「どうして?」「なぜ?」のオンパレードなはずです。ぜひ、そうした素朴な疑問をきっかけに、知的好奇心に身を委ねていろんな勉強をしてみてください。

そうやって論理的に得た知識をベースに効率良く楽しく英語を話し、円滑なコミュニケーションでいっぱいの留学生活にしてほしいものですね。

Naoki