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感染症とパスポートの意外な接点

コロナウイルス問題の騒ぎが一向に収まる気配がありませんが、北海道は早々と緊急事態宣言を打ち出したおかげか、街中には人が戻りつつあります。明らかに外を歩いている人の数が増えました。

一方海外ではヨーロッパをはじめ、アメリカやカナダ、オーストラリアなどでも次々と感染防止策が講じられています。カナダのジャスティン・トルドー首相も「Enough is enough. Go home and stay home.」(いい加減にしろ。家に帰って外に出るな)と強い口調で国民の外出を抑止しようとしています。


(出典:https://globalnews.ca/news/6716919/trudeau-canada-update-coronavirus-march-23/)

しかし現実は感染拡大が続く一方であります。

そんななか、フランスでは3月17日から最低15日間(延長の可能性あり),厳格な外出制限が行われています。フランス全土で検問が実施され,違反した場合には135ユーロ又は375ユーロの罰金が,再度の違反については1500ユーロの罰金が科せられます。

そして、例外的に外出が認められるためには,特例外出証明書 を所持している必要があります。

ウイルスの感染拡大を防ぐために外出禁止、どうしても外出が必要な場合は許可書をとりなさい、ということです。

ちょっと趣旨が違いますが、中世ヨーロッパでペストのパンデミックが起きた時にも「許可書」を持たせる動きがありました。そしてそれは今私たちが当たり前のように使っているパスポートと深い関係が。

中世に猛威を振るったペスト(黒死病)

ペストは古くから複数回の世界的大流行(パンデミック)が記録されているそうなのですが、特に14世紀に起きた大流行では全世界で1億人が亡くなってしまうほど強烈でした。

1347年にシチリア島で感染が始まってから一気に拡大し、ヨーロッパの人口を約3割も減少させたとする恐ろしい病気です。致死率は60〜90%、感染すると全身の皮膚が内出血によって紫黒色になることから「黒死病」ともいわれています。

医師たちは空気感染が原因と考え、空気の入れ替えや肌を空気にさらす入浴も禁じたそうです。空気感染を防ごうと気味の悪いマスクをして治療にあたっていました。



空気感染を防止しようとしたら当然、感染者および感染が疑わしい人を隔離しようという動きが生まれます。まさに今と同じような状況が500年前にも起こったのです。

感染拡大防止策「40日間の船舶の入港停止」

1374年にヴェネツィア共和国で、ペストが流行している地域からの船舶の入港を30日間停止する対策を打ち出しました。1383年に同様の政策が始まったマルセイユでは、入港停止の日数が40日間になりました。

ところで最近カナダやオーストラリア、その他英語圏のニュースを見たり読んだりすると「quarantine」という単語をよく目にしませんか。これは「(伝染病予防のための)隔離、検疫、留置;(伝染病予防のための)隔離 [検疫] 期間」という意味の英語です。

この「quarantine」という単語は、中世ヨーロッパでペストが大流行したときに打ち出された「40日間の船舶の入港停止」に由来します。「40」というのはイタリア語で「quaranta」、フランス語では「quarante」。そこから「隔離」「検疫」を意味するようになったといわれています。


海だけでなく陸上の交易でも検疫

そもそもなぜ船舶の入港停止というかたちで海上の検疫に取り掛かったかというと、中世ヨーロッパにおいては地中海での海上交易がものすごく盛んだったからです。ペストの感染拡大の原因はペスト菌を運ぶネズミの繁殖と考えられましたが、地中海で貿易をする商人たちが商品と一緒にネズミも運んでしまったそうなのです。

そして当然、海だけでなく陸上での交易・移動にも検疫を設けることになります。このとき商人たちは各都市が発行する「衛生通行証」を持ち歩くようになりました。「私はペストに感染していません」というアピールのためです。そしてこの「衛生通行証」こそが今のパスポートの元になったものだそうなのです。

パスポート(passport)というこの単語はpass「通る」とport「港」(porteで「扉、門」)の造語です。通行を許可してもらうために発給されるものであるということがわかりますね。


カナダのquarantineはこの先どうなるのか、、、

カナダで留学中の生徒さん、これからカナダに渡航予定だった生徒さんから連日ご心配の連絡をいただきます。カナダは非常に対応が早く、次々と対策を打ち出して感染拡大の阻止に努めていますが、依然として留学生にとっては見通しが立たずに身動きがとれない状況が続いています。

現地の学校スタッフさん皆様と連絡を緊密にとりあい、またカナダ政府の情報更新を逐一チェックしていくことでなんとか影響を最小限に食い止めることができるように頑張りますので、どうにかこの困難を乗り越えていきましょう!



Naoki