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【緊急】最上級のtheの呪縛から解放されよ!

知らない間に「常識」という呪縛に縛られている皆さん、こんにちは。Naokiです。

中学のときに「最上級」という文法を習ったと思います。

Lake Shikotsu is deep.
(支笏湖は深い)

は普通の文ですが、「北海道で一番深い湖だ」と言いたいときには

Lake Shikotsu is the deepest in Hokkaido.
(支笏湖は北海道で一番深い湖だ)

となります。

この文を「最上級」といい、下記ルールが絶対原則と覚えたはずです。

① 最上級の形を使う(原級:deep → 比較級:deeper → 最上級:deepest)
② theをつける

ところが、この絶対原則のうち②の「theをつける」は実は間違った覚え方です。


最上級だからtheが必要なのではない

次の文のうち正しい方はどちらだと思いますか。

a. Lake Shikotsu is the deepest at this point.
b. Lake Shikotsu is deepest at this point.

実はこれ、bが正解です。

「最上級=theをつける」という絶対原則から解放されてください。theがあってもなくても、最上級の形(estがついた形)であれば最上級の意味は作れます。

とはいえ、theの有無で大きく意味が変わってしまうのも事実。そこでまずは、theの働きから紐解いていきましょう。


the は一つを特定する冠詞

そもそも、theの機能はなにかというと

① 名詞の存在をにおわせる(=冠詞)
② 複数あるうちからひとつに特定する

の2つです。それぞれ簡単に説明しましょう。

① 名詞の存在をにおわせる(=冠詞)

英語にはaとtheの2つの冠詞と呼ばれる言葉があります。冠詞は単体で使うことは絶対ありません。常に名詞とセットで使います。

This is a pen./This is the pen. のように使い、決して This is a./This is the. とはなりません。

つまり、aやtheが登場した時点で「後ろに名詞が来るな」と判断できるわけです。

② 複数あるうちからひとつに特定する

theには複数あるうちから一つを特定するという働きがあります。

This is the pen. は、「昨日めっちゃ多機能で書きやすいペンを1300円で買っちゃったよ。これがそのペンなんだ」という具合に、世界に数えきれないほどある「ペン」というもの中から「昨日おれが買ったペン」というふうに特定をする言い方です。

一方、This is a pen. は石器時代からタイムスリップしてきたおっさんに「これがペンというものだよ」と「ペン」というものを初めて示すようなときに使う言い方です。


theの有無で何が変わるのか?

theの機能を整理したところで話を元に戻します。

最上級の文において、theの有無で何が変わるのか。結論から申し上げると、

theがついている ⇒ 他と比べて「一番」
theがついていない ⇒ それ自身の中で「一番」

意味がわからないと思いますので、冠詞theの機能と関連づけながら説明します。

■theがついている最上級

Lake Shikotsu is the deepest in Hokkaido.
(支笏湖は北海道で一番深い湖だ)

冠詞theの機能は
① 名詞の存在をにおわせる(=冠詞)
② 複数あるうちからひとつに特定する

の2つでした。

この文ってよく見るとこんなふうに名詞がひとつ欠けているのがわかりますか?

the deepest ___ in Hokkaido

theの①の機能より、名詞の存在をにおわせているはずなのに名詞が欠けています。ここに入るのは、もちろん lake(湖)ですね。

また、theの②の機能にも合致していることがわかります。つまり、この文は支笏湖を含む北海道のすべての湖のなかで支笏湖が一番と言っており、他と比べて「一番」だと主張していることになります。



(出典:Categoy: Lakes of Hokkaido by Wikipedia

■theがついてない最上級

Lake Shikotsu is deepest at this point.
(支笏湖はこの地点で一番深い)

これはtheがついていない形が正しいです。

まず、theがついていないということは、後ろに名詞の存在をにおわせません。名詞を置く必要がないんです。

また、この文は他の湖との比較で「一番」と言っているのではなく、支笏湖自身の深さの話をしています。支笏湖は一番深い地点で363mあるそうですが、それはあくまでもそのポイントだけですよね。地上のように平坦ではないわけですから。

このように、湖それ自身の深さの性質について「ここが一番」というときには、他の湖との差別化をする必要がないのでtheは不要になるのです。

練習問題

最後にtheをつけるべきかそうでないかを次の文で考えてみてください。

(1) I am(   )happiest when I'm with her.(僕は彼女と一緒にいるときが一番ハッピーだ)
(2) I am(   )happiest in my family.(僕は家族で一番幸せものだ)
(3) Vancouver is(   )most beautiful when it is rainy.(バンクーバーは雨が降っているときが一番きれいだ)
(4) Vancouver is(   )most beautiful in Canada.(バンクーバーはカナダで一番きれいだ)

(1) 他者との比較ではなく自分が最も幸せと感じる瞬間の話をしているので、theは不要。
(2) 家族内で他の兄弟や親などと比較して最も幸せだと言っているので、theが必要。the happiest の後ろには「人」を示す man や person が省略されている。(I am the happiest man in my family.)
(3) 他の都市との比較ではなく、バンクーバーが一番きれいな瞬間を示しているのでtheは不要。
(4) カナダの他の都市との比較をして一番きれいだと言っているので、theが必要。the most beautiful の後ろには「都市」(=city)が省略されている。(Vancouver is the most beautiful city in Canada.)

最上級=theが必要

この絶対原則は実は間違っているよというお話でした。これを読んで、theの呪縛から解放された方が1人でもいらっしゃるのであれば本望です。

Naoki