There is/are〜.で「〜がいる、ある」になるのはなぜか
Once upon a time, there were an old man and his wife.
「昔々、おじいさんとおばあさんがいました」
さあ、今週も「え、そうだったの?」を提供する時間がやってまいりました。
今回のテーマは There is/are〜.
中学生のとき、「〜がいる、ある」と言いたければ
There is〜.
There are〜.
を使うと習いましたよね。
ところがこれ、文法的にちょっとおかしいのです。
みなさんはきっとこんなことを教わってきているはずです。
英語には5つの文型があるぞ
そう、みなさんの嫌いなSとかVとかのことです。
ここでS(主語)に関しての絶対的なルールについて少しだけ触れておくと
①名詞しか主語にはなれない
②主語は文頭に置かれる
というルールがあります。
主語は「〜は、〜が」と訳しますが、必ず文の先頭にきます。「私は」「その少年は」など、主語になるものは名詞のみです。主語が文頭にくるというのは感覚的にわかります。
さて、では冒頭の一文に目をやりましょう。
Once upon a time, there were an old man and his wife.
出だしが Once upon a time「昔々」 となっていますが、これは主語ではなく単なる修飾語です。
「そうか、じゃあ主語はthereですね」と思っちゃいそうですが、それは間違い。なぜなら
①名詞しか主語にはなれない
からです。
there「そこで、そこに」は名詞ではなく
副詞。
でも
②主語は文頭に置かれる
というルールがあるじゃないか!どうゆうことだ!となります。
場所を表す副詞が文頭に来るとSとVが倒置されるという奇抜なルール
何事にも例外がありますが、これはまさにその例外パターンです。
ここでは、あえて文型を崩して言いたいことを先に言うことで、その言いたいことを強調するという手法が使われています。
日本語でも、
「言いたかったのはそれなんだよ」
というより
「それなんだよ、言いたかったのは!」
と言う方が強調されているように聞こえます。
thereは「そこで、そこに」という場所を表す副詞ですが、それを文頭にもってくることで「存在」を強調する機能があります。
このthereは、「これから人かモノの存在を言うよ〜」っていう気持ちが込められているのです。
Once upon a time, there were an old man and his wife.
文法的な話をします。
thereという場所を表す副詞で「存在のことを言いますよ」とアピールしたので、普通の文型ならS→Vと続くところを、
V(動詞)のwere → S(主語)のan old man and his wife
と順番を反対にしています。
wereというbe動詞には「いる、ある」という意味がありますので、日本語訳は「おじいさんとおばあさんがいました(存在をアピール)」とすればよいわけです。
例外のさらに例外
この「場所を表す副詞を文頭に置いてSとVを倒置する」というルールは他の表現でも使われています。
Here you are.「どうぞ」
一度は耳にしたことがあるのでは?
なにかものを渡すときに使います。
これは Here「ここで、ここに」 という場所を表す副詞がきていますので、先ほどのルールに則るとSとVが倒置されるはずです。
ところが、you are は S→V と倒置が起こっていません。
これはさらに例外で、S(主語)が代名詞(I, you, he, sheなど)だと倒置が起きないのです。
本当は倒置されるべきなんだけど、主語が代名詞だから特別に倒置しなくてよい、ということです。
ちなみにこの Here you are.
「なんで「はい、どうぞ」の意味になるのか?」「「あなたはここにいます」じゃないのか?」
と思う方もいるでしょう。
これは、存在を強調して「あら、ここにいるのね、はい、どうぞ」というのがもともとのニュアンスです。
そこから「はい、どうぞ」という日本語訳が一番自然な訳として定着したと考えてください。
ここまで来れば、こんな文章も理解できます
There comes the bus!「ほら、バスが来るよ!」
Once upon a time, there lived an old man and his wife.「昔々、おじいさんとおばあさんが住んでいました」
ひとつめは、Thereという場所を示す副詞がきているので「存在」をアピールしようとした文です。当然、主語「the bus」と動詞「comes」の位置が逆になっています。
The bus comes.「バスが来ます」と言うよりも、「ほらほら、みてみて」というふうな印象を与えます。これが「存在」の強調です。
ふたつめは、本記事冒頭の文とほぼ同じ意味です。thereのあとにはisやareだけじゃなく、別な動詞がくることもありえます。
以上です。
英語を勉強していると、ささいなことが気になってしまうもの。普段何気なく使っていた表現も深掘りするといろいろな決まり事が絡んでいるということがわかると、勉強がもっと楽しくなるのではないかなと思います。
Naoki