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これこそが「異文化を経験する」ということだ

留学相談に来られた方に「どうして留学したいんですか?」と聞くと、「異文化を経験したいから」という答えが返ってくることがあります。

僕自身も留学を志したときにそのように考えていたんですが、よく考えると「異文化を経験する」ってどういうことか、そのときの自分は1mmも理解していなかったような気がします。

「異文化理解」とか「異文化コミュニケーション」とかっていうと、なんとなく「っぽい」ことを言っているような感じがしますが、同時にちょっとした「浅さ」も感じてしまいます。
つまり、実態がはっきり見えてこない、具体性がないということです。

そして、おそらく多くの皆さんが考えている「異文化を理解する」という経験は、そんなに簡単には手に入らないのではないかと思うのです。



先日、カナダのケロウナにある「Vanwest College」で日本人スタッフとして勤務されているSaraさんがご来社されたのですが、お話を聞いていて「あ、これこそが異文化コミュニケーションだな」と思ったことがあります。

Saraさんは日本で社会経験を数年積まれた後でカナダに渡り、カナダでの職歴がないまま現在のお仕事に就かれましたが、最初のうちは同僚の「仕事のやり方」にすごくフラストレーションが溜まっていたそうです。

たとえば、あらゆる仕事には「締切」(deadline)がありますが、その締切を平気で守らない人がいるんですね。
「締切は守るために設定している」という常識的なことを守れない同僚に対して苛立つのは側から見たら当然ですが、Saraさんはこうした経験から思わぬ「異文化理解」を果たすことになります。

ある日、Saraさんは上司にこう言われたそうです。

You are too Japanese.
(君は日本人過ぎる)

Saraさんの職場では、「締切」は「絶対にその日までに終わらせなければいけない」ものではなく、「その日までの進捗を持ち寄って今後の方向性をチームで検討する」ためのものだったのです。

「締切を守るとか当たり前でしょ」という見方は実は日本人的な発想で、そういうふうに考えない人もいるということ。どっちが正しいとかではないけれど、「締切は絶対に守るべきもの」と考えることは間違っていること。

そんなことを学んだそうなんです。

これ以外にも、「異文化による同僚との摩擦ストーリー」を話してくれたSaraさん。「その考え方をやめないと一緒に働いていけないよ」と言われたこともあったらしく、その苦労は想像に難くありません。



日本を出て海外で、しかも現地企業で働くことって想像以上に過酷です。
自分たちの当たり前が通用しないからです。
自分を否定されたような気持ちにもなるだろうし、「ガチで意味わからん」って思うことも多々あります。
それでも仕事だからどうにかうまくコミュニケーションをとらなきゃならない。

これこそが、「異文化を経験する」ということなんだと思います。

異文化の経験は、こうした苦労と挫折を経てのみ得られるものです。現地にいらっしゃる皆さん、これから渡航する皆さん、留学先では必ず自分が理解できない状況に直面します。

そんなときは「自分が絶対に正しい」という考えの元おこなっている言動を自ら客観視してみてください。

Naoki