言葉も生きている〜Black Fridayの成り立ち〜
本日11月26日(金)は「ブラックフライデー」と呼ばれる小売店のセールの日です。
アメリカでは11月の第4木曜日に感謝祭(サンクスギビングデー、日本の勤労感謝の日のようなもの)がおこなわれ、その翌日のことを指すのがこの「ブラックフライデー」
アメリカのみならず、カナダやフランス、イギリスなんかでもこのセールが開かれます。
ハロウィンやバレンタインをはじめ、欧米圏で古くから慣習になっているイベントを取り入れて盛り上がる風習がここ日本にもありますが、「ブラックフライデー」もそうしたもののひとつ、one of theseになりつつあります。
皆さんは「ブラックフライデー」と聞いて何を連想するでしょうか。
僕は最初、「闇」を感じました。「ブラック」という単語のせいでしょう。
そういえば昨日たまたま飲んだブラックコーヒーがブラックを極めすぎていて、とてもじゃないけど飲めませんでした。
「ブラック」にはなんだかマイナスなイメージが拭えないのは僕だけでしょうか。
一方で「黒」は縁起の良い色でもあります。ビジネスにおいては「黒字」といえば「利益」を表しますもんね。
さて、「ブラックフライデー」が「ブラックフライデー」たる所以は少しだけ歴史をたどる必要があります。
ブラックは文字通り「闇」だった
「ブラックフライデー」の「ブラック」は元々マイナスの意味で使われていました。
(出典:https://www.dictionary.com/e/black-friday/)
1869年:資本家と鉄道関連の実業家が金市場を独占しようとして財政的なパニックを引き起こす
1929年:世界恐慌の予兆となる株価の大暴落
1950年代:工場労働者が週末に連休を作るために相次いで病欠の連絡を入れる
1960年代:感謝祭翌日のセールで(たまに空軍vs海軍のフットボールの試合と重なり)街中は人がゴミのように → 交通整理をする警察官がそれはそれは大変な思いをする
以上のようなことが、11月の最終金曜日に発生したため、この日は本来文字通り「暗黒な」「闇の」1日として認識されていました。
現在の意味が生まれたのは僕が生まれる10年前
1980年代に入り、ビジネス上では「黒字」で「利益」を示すよねっていうことで
「ブラックフライデー」は販売側あるいは経済全体のポジティブな側面を含むことになりました。
この「ブラックフライデー」という用語が世間で使われ始めたのが1960年代だったので、20年かけてネガティブな意味からポジティブな意味に変遷していったということになります。
僕は1990年に誕生して今30歳なので、40年前のお話です。わりと最近。
言葉も生きている
善はいそげ。急がば回れ。
一石二鳥。二兎を追う者は一兎をも得ず。
仏の顔も三度まで。三度目の正直。
ことわざや古事成語を見ていると、「いやそれまったく逆のことを言ってるけどどういうこと?」という矛盾を感じることがあります。(世の中ってそんなもんですよね)
英語でもそうです。
前置詞のwithは「衝突」の結果「共存」と「分離」の2つの相反する意味が生まれます。
(
「前置詞のwithは「一緒に」だけではない」)
また、不定詞の(to+動詞の原形)は「〜するために」という「目的」を示す場合もあれば、「〜した結果」という「結果」を示す場合もあります。
目的と結果は真逆のことなのに、同じ to+動詞の原形 で表現するのです。
I saved up my money to go and study in Canada.
【目的】僕はカナダに勉強しに行く
ためにお金を貯めた。
【結果】僕はお金を貯め
て(その結果)、カナダに勉強しに行った。
そう考えると、「ブラックフライデー」が「暗黒、闇」というマイナスの側面と「黒字、利益」というプラスの側面を持ち合わせているのは何も不思議なことではありません。
しかし面白いのは、「ブラックフライデー」という言葉が現代的な意味に仕上がった過程に、きちんとした歴史の流れがあることです。
いや、「仕上がった」と言うのは語弊があるかもしれません。
これから先、今では想像もつかないような新たな意味が「ブラックフライデー」に込められることになるかもしれないのです。
Naoki